「戦争と沖縄」(池宮城秀意)

沖縄の戦争はまだ終わっていない

「戦争と沖縄」(池宮城秀意)
 岩波ジュニア新書

地上戦のあった国内唯一の地。
終戦後数年にわたる
米国の占領を経験した地。
土地を強制収容され、
基地が居座る地。
沖縄の戦争は
まだ終わっていないのです。

本書は沖縄戦を中心とし、
江戸時代の薩摩藩の圧政の時代と
戦後の占領時代を含め、
沖縄の歴史を詳らかにしています。
その中でも
「第5章 日本復帰まで」からは、
現在の深刻な基地問題を
考えさせられました。

「ひめゆりの塔」に代表される
沖縄戦を描いた小説や
ドキュメンタリーなどに接する限り、
牛島司令官自決によって
凄惨な沖縄戦が修了し、
平和がもたらされたような
印象を受けてしまっていました。
しかし、その後の沖縄の歩みも
私たちの想像を超えて
過酷だったのです。

住民は捕虜として収容所に送られる。
収容所から解放されても帰る家がない。
土地を米軍に奪われている。
米軍による一方的な支配。
さらなる土地強制収用。
沖縄県政への米国の介入。
祖国復帰への運動…。

かれこれ十年ほど前、私は修学旅行で
生徒を引率して沖縄に行きました。
そのときのガイドの説明では、
沖縄の町は坂道が多いとのこと。
確かに山の中に町があるような
印象を受けました。
でもそうではないのです。
高台へ移動すると、
広々とした平地が
コンクリートで埋まり、
そこにヘリや軍用機の数々が
ひしめいている情景を目にしました。
生徒も一瞬で
沖縄の現状を理解しました。
平地がないのではないのです。
平地のほとんどを
基地に奪われているのです。
平地がなければ
農業も工業も商業も
発展するはずがありません。
沖縄は米軍基地によって
産業が発展できない
構造になっているのです。

沖縄について、日本人一人一人が、
もっともっと理解しなければ
ならないのだと思います。
基地を沖縄に押しつけて
いいはずがありません。でも、
受け入れる県があろうはずもなく…。

だとすれば、日米同盟そのものを
見直すことに
つながっていくと思うのです。
私たちは自分の住む近くに
基地を受け入れるか、
もしくは米国と縁を切り、
彼の国の軍事力に頼らない
自立の道を模索するか、
どちらかを選ぶ覚悟を決める必要が
あるのではないかと思うのです。

戦争のこと、沖縄のことを
もっともっと子どもたちに
知ってほしいと思います。
現代史を学ぶ中学校2年生に
ぜひ読んで欲しい一冊です。

(2020.6.18)

丸岡ジョーさんによる写真ACからの写真

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